手のひらを広げてじっと見る。少し赤ら顔ですべすべしてきれいである。よくはたらく手だ。百握りじゃなく、いわゆるクゾ握りというやつだが、生命線は長く手首の方まで伸びている。むかし指紋を見るのが好きで、10本中1本をのぞいてみな完全な渦巻き状態できれいだった。いまは擦り切れて指紋がない。どうりでつばを付けなきゃページもめくれない。
爪はひどい状態でやや奇形である。右手の爪は両端がそっくり返ってしまっている。心臓が悪いのでしょう、とよく言われたがまさにそうだったな。人差し指など深爪などしようものなら爪がそったところから血がにじむ。いまもカット伴で抑えている始末だ。右手の小指は左手の小指より1センチ弱短くこれも奇形的である。
そんな不細工なおれの手だがなんともかわいく愛らしい手である。なんでも思いどうりにはたらいてくれる。なんでもしてくれる。この手はオレのこころである。いやこころ以上に良くはたらくのだ。こころが少し休めって言っても手の方が動きだしていく。わたしはこの手が大好きである。わが手をじっと見つめて感謝する。