5月のパリが懐かしい。マダムTからご機嫌伺いのメールが届く。まだ空気は冷たいけど、少し陽射しが強く感じられる、とあった。待ちに待ったパリの春だろう。長い冬に閉ざされて、多くの人が鬱になり、道行く人の中には独り言を言っていたり、泣いている人もいたりする。Ⅰヶ月間の日照時間はたったの数時間というから気もふさぐのだろうか。少しの日差しでもあるとドッと人が出て、カフェというカフェの陽だまりに、肩を寄せ合い、ひとであふれる。ビロードのように、やさしい風が肌をなめるとき。この5月、アトリエのみなさんと、スケッチ旅行に行く予定だったが、今年も中止している。セーヌ通りの画廊街を歩いてみたい。