二人のマダムが100号と50号の大作をアトリエに持ち込んできた。Aさんは真っ赤な
色彩の中になにやら微かに卓上らしき静物が見える半抽象的な作品。なかなか魅力
的だ。具象を求める公募団体への出品だからどんな評価を受けることやら。ご本人は
ダメだったら落として結構よ、とケロリと言ってのける腹の座ったひとである。
Nさんは完全抽象の表現者だが昨年のK市の公募展で見事奨励賞を受けている。毎
回見るたびに絵柄が変わっていてその苦闘ぶりが想像できる。描いている自分がなに
を描きたいのかがつかめないのだろう。みんな同じ悩みを抱えながら模索しているのだ。
そのうち自分はこれをやりたいのだ、これしかできない、というのが見えてくるのだ。
アトリエにはめちゃめちゃになった画布を持ち込んできてもらいたと思っている。なにが
なんだか、わけのわからなくなってしまったような、悪戦奮闘して泥んこになってしまった
キャンバスが見たいものである。きれいにかっこよく仕上げたものが一番つまらないのだ。
いつもこんなことを言ってはみんなを困らせているセンセである。
こんなアトリエでいま生徒募集中です。お出でをお待ちしております。