仲間たちと居酒屋に行ってメニューを見たら「あゆの塩焼き」が目にとび込み早速注文した。なんつったって6月はあゆの解禁だからな。おやじは魚屋のくせして大のつり好きというかつり気違であるからよく夜釣りというか投網に付き合わされた。つりが大の苦手な吾輩である。釣り針にみみづやごかいを刺すときのあの身震いが出るような悪寒、みみづが痛がってか大きく口を開けたり、ゴカイが苦しがって左右に動くさまがとても嫌だったから。しかしおやじは吾輩が帰省するとそれを待ってたかのように”行くか!?”と網を投げるしぐさをして誘うのである。反抗期だったころから嫌いになっていたいやじだが夜半まであゆを捕りに付き合った。たくさん取れすぎて魚を入れる魚篭の紐が切れあゆが全部流された時のことが忘れられない。6月が来るとその日のことを思い出す。あゆの塩焼きをほうばりながらそんなおやじとのことを思い出していた。一番嫌いだったおやじのことがいまもっともなつかしい6月。