リュクサンブール公園を通り抜けモンパルナスに向かう路地を歩いていると
”パードンムッシュ!”と声を掛ける男がいた。どうやら地図をひろげて道を
聞いているらしい。来たばかりの俺に聞くなよ、と思いながらもあれこれやっ
ていると、2人組の男が来て”ポリスだ、パスポートを見せて欲しい”と言わ
れた。”こりゃやばいことに巻き込まれたな”と警戒しながらも気が動転して
いたのだろう。かの男は素直にパスポートを提示する。”お前も見せろ”と言
われ、仕方なく出そうと決心して内ポケットから出した。それでも躊躇しため
らっていると再度警察手帳を出しポリスだから見せろと強く要求された。パス
ポートは海外旅行者にとってはいのちの次に貴重な物で身分を証明する唯
一のものであるから自分の身から離れることにはものすごい恐怖心が湧くの
である。でも仕方ないとあきらめてパスポートを渡した。その瞬間なんともいえ
ない強烈な不安が襲い瞬間的にポリスの手からパスポートを奪い返していた。
”お前ら変だ!!”と我を忘れて大声を出して叱責していたのである。そしたら
彼ら3人(道を聞いて来た奴もグル)はニヤニヤしながら立ち去っていったの
である。
やばかったなーあの時は。パリに来たばかりで街を探険中の出来事である。
それ以来パスポートは持ち歩かない、警察官は必ず制服を着ているという
ことを学んだのである。
(リュクサンブール公園の2人)